はじめに

 日本大学エベレスト登山隊1995は、日本大学山岳部創部70周年記念行事として、未踏の北東稜からの初登頂を目指しました。私たちは、ネパール・ヒマラヤ、グリーンランド、そして日本人初の北極点到達と活動の場は世界の高峰、秘境に数々の足跡を残してまいりましたが、世界最高峰への憧憬はつのるばかりでした。1992年頃、若手OBが提案し、未踏ルートとして唯一残されている北東稜に注目しました。その困難な尾根は、我々のような単独大学のレベルで挑戦するにふさわしいルートなのかどうか。実力のあるクライマーはいるのか。OB会で検討を重ねるに連れて、登山隊の規模は次第に大きくなり、本部の山岳部から各学部山岳部とOB会にまで拡大し、オール日大の計画として進んでいきました。
 今回の登山は我々にとって失敗は許されないものでした。それは出発直前に同時期同ルートにインド陸軍の大きな登山隊が入るという情報がとびこみ、さらに秋には韓国隊も試みるというものでした。こうした状況で緊張の続く中の1995年2月19日に、私たちは日本を出発しました。